PROJECT STORY O1

「お客様が本当にしたいこと」を実現する

新関西製鐵・星田工場の鋼材圧延ラインの設備リニューアル

MISSION

多彩な鋼種・サイズを
生産する圧延工場。
短期間の垂直立上で刷新し、
ライン統合への道も拓く。

世界最高水準の品質を誇る、日本の鋼材圧延加工技術。なかでも、建設産業機械や建築補強部材など多用途に使われる平鋼で世界最多、月500種類超の鋼種・サイズを生産するのが、新関西製鐵株式会社の星田工場だ。その鋼材圧延ラインの設備リニューアル プロジェクト。
「圧倒的に短い工期」「できる限り操業を止めない」「お客様が本当にやりたいことを、見つけながら一緒に実現する」。プロジェクトの本格稼働前から、数々の課題と壁に直面する。困難を極めるミッションをどう完遂するのか? エンジニアリング企業として培ってきた技術力と機械・電気・営業が一体となって連携する「ALL E&M」の総合力を発揮していく。

PROJECT MEMBER

  • 電気系エンジニア

    豊田 和也

    Kazuya Toyota

    機電事業部 プロジェクト本部 EICエンジニアリング部 計電技術室

    ■PJTでの役割
    工程・進捗管理など全体を統括管理するPM(プロジェクトマネジャー)を担当。

  • 電気設計エンジニア

    太田 健史

    Takeshi Ohta

    機電事業部 プロジェクト本部 EICエンジニアリング部 計電技術室

    ■PJTでの役割
    ミルモーターのAC化、駆動装置・制御システムなど電気設備の設計を担当。

  • 機械設計エンジニア

    角南 克哉

    Katsuya Sunami

    機電事業部 プロジェクト本部 機械エンジニアリング部 機械技術室

    ■PJTでの役割
    アップルーパーなど、圧延ライン機械設備の設計・製作・据付を担当。

  • 営業

    阪口 敦史

    Atsushi Sakaguchi

    営業本部 第二営業部 東日本営業室

    ■PJTでの役割
    受注への営業提案、お客様との交渉やPJTチームの調整窓口となるつなぎ役を担当。

製販も機電も、
一体で連携する強みを発揮。
当社だからこそ提案できた、
操業を止めないリニューアル。

巨大なミルが並び全長100mを超える、星田工場の壮観な圧延ライン。
巨額を投資するPJTは、「お客様が本当にしたいこと」を確認し合うことから、第一歩を踏み出した。

阪口
新関西製鐵様が求める、理想のリニューアル。その姿を目に見えるカタチにしたのが、ここにいる3人のエンジニア。営業の私は納期や費用を検討しつつ、お客様とのいい関係性をつなぐ役割。
豊田
本当にやりたいことは何か、どんな方法ならできるか。それを一緒に見つけ出すことから始まったよね。
太田
PJTを通して、ずっと「お客様にとって、いいこと」を提案できたし、前向きに取り入れてもらえたことで、より良いカタチにできたと思っています。
阪口
当初の3年計画が、トップ面談で「1年でやって欲しい」と。リスクの高いチャレンジだけど、当社らしく「やってみせます!」と(笑)。
豊田
角南くんには、更新するミルモーターの据付も担当してもらった。外注工事ではなく、社内で連携できたことが、約11カ月の短い工期でもやり遂げられた理由だね。
角南
既存のミルモーターを外し、新モーターを据付け、電気の配線をつなぎ、制御装置も更新・調整し、試運転まで完了する。工程調整で機械・電気制御が互いに、貴重な日程を奪い合いましたよね(笑)。
豊田
それぞれに、いい仕事をする時間が欲しい。でも、リニューアル工事の操業停止は最低限に、というのがお客様の要望だった。
阪口
競合他社の提案はすべて、長期的な操業停止の内容。当社だけが、工期を更新項目ごとに4期に小分けする「操業しながらの刷新」を提案できた。機械と電気、頼れるエンジニアの連携力が高く、豊富な実績も強みの当社でなければ、できないことだった。

ミルモーター9台と制御システムの刷新。
エンジニア&営業の製販一体、機械&電気の機電一体となって、スピード感ある挑戦が始動する。

太田
ここは俺に任せて、そこは任せるから。互いに思いやり認め合いながら、仲間のためにできることをやるのが、当社の信条。機械・電気・営業、「All E&M」の総合力をしっかり発揮できたよね。
阪口
PJTが始まってから、急にやろうとしてもできないこと。日頃から社員同士、またお客様とも前向きに協力し合える、スピード感と柔軟な姿勢が根づいているからね。
角南
契約直前に、急な仕様変更が必要になった時もそうだった。関係会社やメーカー、仕入先への再見積もり依頼や調整を、全員で乗り越えた。チームの結束がグッと、高まった気がします。
豊田
「できません」ではなく、どうすればできるか。何かあればみんながすぐに集まって、互いに協力し合い、その場で解決できたのは大きかったね。
無張力圧延のアップルーパーと、
モーターの騒音。
期待の新設備も想定外の
トラブルも納得の解決へ。

圧延ラインの更新に合わせて、鋼板の板厚・板幅の品質精度の向上へ、鋼材の張力を制御するアップルーパーも新設。
安定制御に不可欠な、ミルモーターのAC化も実現する。

角南
スタンド間に鋼材の無張力制御に必要なルーパーを新設したい、というお客様の強い要望がありました。機械的な工法として、選択肢は3つ。鋼材を山成りに蹴り上げるアップルーパー、横に押すサイドルーパー、蹴り下げるダウンルーパー。多彩な鋼種を生産するお客様には、アップルーパーがいい、と判断しました。
太田
蹴り上げる角度や高さ。ループ制御の無張力圧延で、どこを目指すか。ミルモーターのAC化とともに、角南くんと調整を繰り返したね。
角南
アップルーパーの機械設計・据付は初めてだったこともあり、試行錯誤しながら対応しましたね。
太田
ミルモーターのAC化更新は高い精度が求められる据付だったけど、他メーカーの方が見に来て「非常に、よくできていますね」と感心してたよ。
豊田
品質の違いは明らかで、鋼材の板厚・板幅の寸法誤差が半減した。手動だった制御オペレーターの細かな調整も、自動化できるようになったよね。
阪口
使いやすく、調整が楽になったし、制御担当の2人が丁寧に操作方法を説明し、自動化への不安も払拭してくれた。歩留まりが向上し、収益面でもお客様に貢献できたよ。

独自の新型通信変換装置を導入し、制御機器・システムの約20%削減にも成功する。
だが、2期に分けたミルモーターの更新で、1期目の工事完了後に予期せぬ事態が起きた。

豊田
高周波で、キーンと頭に響く不快で強烈な音が…。メーカーでの事前検査は圧延ラインと環境が違って、確認できなかったんだよね。
太田
鼓膜が破れそうな臨場感で、どう考えてもうるさい(笑)。
角南
最初は機械的に、モーターに防音カバーをつけようとしたんですよね。騒音対策に詳しい社内の専門家の協力を得て、私が設計しました。
阪口
騒音の専門家がいるのも、当社ならでは(笑)。
角南
製鉄現場の様々な設備でエンジニアリングを手がけてきましたから。防音カバーが必要なシーンも、あったんですよ。
太田
電気的にも、電気の流れを制御システムで調整し、モーター励磁音を低く抑えることを考えた。ただ、音が低すぎても振動を感じるんだよね。
角南
腹に、ドーンと響く感じで。
豊田
すぐに解決しておかないと、2期工事でも同じトラブルを繰り返すことになる。機械的と電気的、2つのアプローチで納得いただける解決策をお客様に提案し、後者に決まった。
太田
高すぎず、低すぎない。ちょうどいい音色で納得いただいた。モーターメーカーの方も「こんなこと、初めて」と驚いていたけど、これも当社にとって新たな知見になりました。
現場の方々も巻き込み
「お客様と一緒に」を実践。
当社ならではの
「価値ある仕事」をこれからも。

思想を変えずに、お客様と一緒にいい設備を立ち上げることができた。
2020年5月にはすべてのリニューアルが完了する予定だ。

阪口
実は、お客様には受注後すぐに「現場のみなさんの想いも汲み取って、一緒に立ち上げていきましょう!」と伝えていたんだよね。だから試運転後に、お客様が笑顔で「現場も巻き込んで、一緒にやり抜いてくれた」と言ってくれたのは、嬉しかった。
角南
阪口さんが親睦会を企画した時も、お客様が積極的に、現場の方々へ参加を呼びかけてくれたそうですね。
阪口
現場の品質も仕事のしやすさも、一番分かっている方々だからね。徹底的に仲良くなってつながりを深め、協力を得やすい環境にしたいな、と。
豊田
それって、エンジニアの私たちにはできないこと。おかげで、お客様から「心配事をすべて解決してくれた!」と言っていただき、「E&Mさん」から「豊田さん」へと名前で呼ばれるようにもなった。
太田
いい関係が築けていないと、改善できることも、できないままになるからね。中央操作室のライン監視モニターも「角度を自由に変えられたら…」と聞いて、すぐに対応したら「これが、コベルコE&Mの技術力か」と。すべてをひっくるめて、私たちの仕事をちゃんと見ていてくれたんだなって。
阪口
これだけの大規模工事だと、必ず何かが起きるし、原因究明には多大な労力とコストがかかる。それを未然に防ぎながら、お客様も私たちも互いに思想を変えずに、一緒にいい設備を立ち上げることができたよね。

自らの手でやり遂げた自信と成長を実感し、
さらなる新たな目標もそれぞれが見据えている。

豊田
今回、初めてPMを任されて「責任感、半端ないって!」と。工期や予算の管理、お客様との折衝…。すべてがこれからの財産になるし、みんなにしっかり任せる大切さも実感できた。
阪口
当社の強みを発揮できるPJTだったし、それだけ価値ある仕事をやるんだ、という想いが全員にあった。
太田
エンジニアとして久々に新鮮な気持ちになれた。スケールの大きな製鉄プラントを自分が設計し、立ち上げて、お客様に喜んでもらえる。その実感にグッと胸に迫るものがあって、「やっぱり、この仕事はいい!」と。
角南
私は反省点もあります。鋼材が流れるガイドの角度や間口の広げ方など、据付時に「もっと、こうして欲しい」と教わった声を、設計段階からうまくヒアリングできていたら、と。
豊田
でも、あれだけの規模をちゃんとループ制御できるだけで、本当に凄いことだよ。
角南
アップルーパーで一つの解を得たのは、自信になりました。高めた技術を設計に、どんどん活かしていきたいですね。
太田
これまでも薄々感じていたけど、「当社の機械と電気が連携すれば、何でもできるぞ!」と再確認したよ。
阪口
工場のすべてを、設備のことなら任せてください。そう言えるように、自信を持って新しいメニューを増やしていこう。